世果報いざなゆる 晩の歌声
聞けばうれしさや 原の人々の
世果報誘ゆる 晩の歌声
尚育王
聞けば喜ばしいかな 農村の人々の
世に果報をもたらす 晩の歌声
世に果報をもたらす 晩の歌声
かつて沖縄各地の集落では、日が暮れると家々から三線の音色と謡声が響いてきたものだといわれます。こうした沖縄の平穏な日常風景を詠んだこの琉歌に、憧憬と理想を込めてこのウェブサイトの副題として引用しています。
読み人の尚育王は、琉球最後の国王尚泰の父です。諸外国の船舶が到来する19世紀半ばの激動の時代にあって、内外で種々の試みをしましたが、30代半ばで早逝しました。この歌からは、国を治める重責を負った者のささやかな安堵も感じられます。
言葉
- 聞キバ:聞けば.現代口語ではチケー[chi=chun, =kan >chi=ki+ba ≫chi=kee]。
- 原:耕地や田畑などを含む、広い意味での畑地を表す。
- 世果報:豊年≪弥勒世果報.
- 人々:文語的表現で、一般には「御万人」などと言う。