【昔話】薄情な夫
昔、首里にあった話ですが、たいそう美しい女を妻にしている人がいました。妻があまり綺麗なので、夫はこの妻がもしかしたら他所に惹かれることがないかしらと、朝も晩もいつも心配ばかりしていました。
あまり心配したせいでしょうか、この夫は重い病気にかかってもはや今日か明日かというほど危なくなりましたので、妻に向かって「「もうわたしはとても危ない。おまえは私が死んでしまえばまた夫を持つだろうな。」と言いました。するとこの妻が言うには、「わたしはここに来た以上はこここそが死にどころ、ここより他はどこにも行きません。あなたはつまらない心配をなさらないで、早く丈夫におなりになるようなさいませ。」といいました。
ですが、この夫は、「妻がそう言ったところで、自分が死ねばどうなっていくかわからない。ああ残念、死んでも死にきれない。」と言って涙なども落とすようすでした。すると、この妻は、あなたがそれほど心配なさるなら私の覚悟をお目にかけましょう。」と言って、台所から包丁を持って来て自分の鼻を切って見せました。